ろうと思います。

          3

 たしかに、現在いろんな雑誌に発表されている小説類全体の質的な平均水準から見て、風俗派や肉体派の小説類の質がそれほど劣悪だとは言えません。全体の半分以上が風俗派や肉体派の小説なんですからね。あたりまえの事です。とにかく、商品としての規格はそなえていると見なければなりますまい。しかし同時に、商品としていちじるしく他よりもすぐれた性能を持っていると言うのは、言い過ぎのような気がします。
 しかし、よく売れるのは、事実らしいのです。事実はいつでも重要ですし、興味があります。ですから私はいろいろ調査してみました。先ず雑誌の編集者七、八人についていろいろ問い合せ、次に学生、勤労者、家庭婦人その他の雑誌購読者の五十人ばかりに向って質問してみたのです。その結果こういう事がわかりました。雑誌編集者は、ほとんど全部、風俗派や肉体派作家を芸術家としては[#「芸術家としては」に傍点]軽蔑しています。人間としても重んじていません。だから、本心は自分の雑誌にそれらの作家の作品をのせる事を好んでいない。すくなくとも私に向ってはそう言いました。ウソかも知れませんが、しかしとにかくそう言うものですから、しばらくそれを信じて話を運ぶ以外に手はありません。「だのに、なぜ高い稿料を出してのせるんですか?」と問うと、これまたほとんど異口同音に「経営者や会計部がのせることを要求しますからね。編集者なんて弱いもんで、経営者や会計には頭があがらんですからね」「しかしどうして経営者や会計部がそんな要求をするんでしょう?」「それは、あたりまえでさあ。風俗さんや肉体さんをのせると雑誌が売れるからですよ」「なるほどそうですか。しかし[#「しかし」は底本では「「しかし」]風俗さんや肉体さんをのせると、どれ位よけいに売れるというタシカな事を調べましたか?」「いや、それは調べません。なんとなく、そんなふうな気がするんです」
 こんな編集者が一体全体、編集者と呼ばれる価値があるかないかを言い立てるのは私の任ではありません。次に購読者です。五十人ばかりの中で、特に風俗さんや肉体さんの誰それの小説を愛読しているという人は一人もいませんでした。つまりその誰それの小説がのっているから、その雑誌をわざわざ買うという者は一人もない。どれでもよいのです。ただ、百円サツを一枚にぎって書店へフラリと
前へ 次へ
全137ページ中117ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング