。「カタギ」な仕事や空気が非常にすくなくなってしまっているのです。
3
Kさん。
――というふうに、私は良い気になって語っていますが、あなたから見れば、さぞ片腹痛いことでしょうね。というのは、あなた御自身一個の批評家なんですから。しかし、まあ聞きなさい。たしかにあなたは、すぐれた批評家です。しかし、そのあなたにしてからが、どだいナッテいない。為すべき事をしようとしないじゃありませんか。
つまり、だから、それを私が一つして見ようと言うのですよ。私は批評家ではない。しかし、待っていても、あなたは沈黙している。そして他の大部分は大言壮語している。しかたがないから、その任でもないのに私が出しゃばって見ようと言うのです。批評家がなすべきことの一つを私がやって見ます。「批評家Kよ、後学のために見ておれ」と言うわけです。無学にして怯懦なること私のごときでさえも、この程度の勝負を演じることができることを、あなたの前に示して、それによって、あなたの奮起をうながそうというわけです。もちろんあなたや大方の批評家たちから見れば棒ふり剣術にちがいない。「野郎、今に眼から火を吹いて、ひっくりかえる」でしょう。そのひっくりかえる所まで御覧に入れましょう。
そうですとも、ノボセあがりはじめると、どこまでノボせるか方途のない人間ですよ私は。――そういうつもりで、この文章を私は書きはじめました。そして、そのためのさしあたりの方法としては、この私という人間が文学芸術をどんなふうに読み味わい、それをどんなふうに考えたり自分の血肉にして来たか、しているかについてオシャベリをしようと言うのです。それもなるべく具体的に、それぞれの作品や文芸現象などに密着しながら語ってみようと言うのです。やり出したら、すこしつづけてやります。しかし、此の回は、もうだいぶ紙数を食ってしまい、あと作品評をはじめると、中途半端になりそうですから、それは此の次からはじめるとして、今度は余った紙数で、ついでの事に、今の批評家たちの個々についての私の見かたをのべておきましょう。そうすれば、今の批評家たちに対する私の不満が、もうすこし具体的にわかってもらえるでしょうから。同時に、恥をしのんで「カイより始める」ところの私の批評の功と罪とが、前もって、よりハッキリするでしょうから。
先ず、青野季吉とか正宗白鳥とか
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