j
ベルト まあ、こちらへお掛けなさいな、ゴッホさん。どうなすったんですの?
テオ ありがとうございます、モリソウの奥さん。いえ、この、兄のことではホトホト手を焼いていましてね、どうしようかと思っている所に、ちょうど、タンブランでゴーガンさんに逢ったものですから、お願いしようと思って、こうして――
ベルト そうですの、タンブランにいらっしたんですの? 私たちは、これから行くんです。どんな具合、それでお客さんは? ちっとは絵は売れてます?
テオ まだ一枚も売れていません。レストランでの絵の展覧会は珍しいので、客はまあ相当来ているようですけど。
エミ すると兄さんもタンブランですか?
テオ いえ、今日は朝から郊外の方へ写生に出かけて――シニャックさんと一緒じゃないかと思います。外に描きに行ってくれると、いくらか助かりますけど、帰って来ると忽ちまた、イライライライラして、とにかく一日中昂奮しているんですから。夜は夜で私をつかまえて、絵の議論です。私はこの、昼間のつとめで疲れていますし、それに身体もあまり丈夫でないものですから、静かにして早く寝たいと思っても寝せてくれません。寝せてくれと言うと
前へ
次へ
全190ページ中94ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング