、あなたは、このようにけがらわしい所に説教所を設け、教会の威厳を損なうような不潔な服装をして、自分自らがキリストの再来であると言うようなことを口走り、教会から送る月給は、全部、犬のような労働者に与えて浪費してだな、キチガイじみたことばかりしておる。しかも、今度は坑夫を煽動して炭坑ストライキを起し、その先頭に立って騒いでいられる。
ヴェルネ そりゃ、違います! そんな、いいえ、ここの先生は、ただわしらのことを見るに見かねて――
ヨング 黙んなさい。あなたに言っているのではない。それで、こちらの炭坑会社からブリュッセルへ手紙が来て、教会から、あなたに対し厳重警告を与えてくれとあったので、私がこうして出向いて来たのだ。私の考えでは、実状を調査した上で、あなたによく忠告してだな、実は、なんとかしてあなたのために良かれと思って来て見ると、いやどうも、このありさまだ! すべてのことは前よりもひどくなっている。しかもそうして明瞭に、神さまを罵っている! これでは、もう、なんとしても弁護の余地はない。あなたとしても、そのように考えていられる神や福音のために伝道の仕事をなさる気は、もはや、おありでなかろうと思う。(椅子から立つ)私はブリュッセルに帰って直ちに、あなたを解職するような手続きを取ります。さようなら、それでは――(戸口の方へ歩き出す)
デニス やい、やい、やい! くそ坊主め、よくも言ったな! 犬のような労働者だと! おおよ、犬だ俺たちあ! おめえたちから、犬にされてしまった坑夫だ! 犬には教会は要らねえんだ。神も坊主も要らねえんだ。くそでも喰え! 俺たちにや、人間が居りゃ、たくさんだ。真人間が居てくれりゃ、たくさんだぞ。ここの先生は、俺たちのために、食うものも食わねえで、何もかも俺たちに投げ出してくれてる、真人間だぞ! 見ろ、この人のザマを! こんなザマになって俺たちに良くしてくれてんだぞ! お前みてえに食い太ったインチキ牧師なんかに較べりゃ、先生はキリストだ。へいつくばって、足でも舐めろ、畜生め!
ヴェルネ デニス! おい、デニス!
ヨング (冷笑して)よろしい。それでは、あんた方は、あんた方のキリストに救ってもらうがよい。(ユックリと戸口から出て行く)
デニス くそ!(ヴィンセントに)あんたも、あんまりおとなし過ぎるじゃないか、先生? あんなインチキ野郎、もうすこし何と
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