の物だよ? ……だから、そうなんだ。そうでなければ、カンジョウが合わない。……神は悪だ。そして善だ。善で悪だ。ハッキリというと、だからなんでもないんだ。つまり、無だ。プラス・マイナス、ゼロだ。……そう思いたいんだ、実は。ところが、思えない。……ざんねんだが、どうしても、思えない。……どこかにいらっしゃる。それが、私にわかる。……やっぱり、どこかに居るんだ。……そして、こっちを見ている。……どっか片隅に居てコッソリこっちを見ている。……(立ちあがっている。その時、照明弾の強い青い光が、窓を照らし出して、室内をカッと明るくする)……じゃまっけだ。じゃまだ。片隅にコッソリかくれていて人間のすることにケチをつける。
治子 兄さん!(空襲と兄への二重の恐怖のために、兄の顔と、窓の外を見くらべつつ、これも立上っている)
人見 よけいな事だ! オセッカイだ! そうじゃないか。……あなたを隅っこから引っぱり出して来て、しめ殺してやりたい!(兄妹の顔を真青に照らし出している強い光)

        6

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 片倉一家の壕舎。
 地中に掘りさげたものではなくて、傾斜地に作った横穴壕を、すこし掘りひろげて三畳ぐらいの広さにしたもの。土の上に板を敷きならべ内部の一隅にフトンをしいて、両眼をギッシリとホウタイした俊子が寝ている。母親のリクは、その枕もとに坐って、口の中でブツブツいっている。父親の義一は、こちらの片隅にすえた石油箱に向って、時計の修理をしている。入口に近い、焼けた木の根に、きたない訓練服にゲートルで、よごれたリュックをわきに置いて、たった今よそから帰って来たらしい、憔悴した明。酔っている。それに向って立っている工員姿の北村。
 午後の陽がひどく明るく静まりかえっているために、焼けくずれた傷痕のなまなましさが、光景の上にも人々の姿や表情の上にも、かえってクッキリと現われている。
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明 ……(抑揚なくノロノロと)……だから、……だから死ねば、いいんだろう?
北村 そんな君、そんなふうに――
明 死んじまやあ、いいんだろう? いいじゃねえか、それで! んだから、俺あ志願したんだ。許可がおりるのを待っているんだ、だから。……死ねばいいんだ。ヘイチャラだよ、死ぬことなんか!
北村 そりゃ、俺だって――しかたがねえからね。それに今となっては
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