かって、叫んでいる。聞きとれない。こちらの、治子と俊子は聞き取ろうとして、トラックの方へ走り寄る。……やがて友吉は、両手を組み合せて、祈るようなかっこうをして、こちらの治子と俊子を向いて、早口に何かいいながらなんどもなんどもうなづいて見せる。
 若い女、すぐそばでは友吉の言葉が聞き取れると見え、不意にプーッと吹き出し、ゲラゲラ笑い出して、嘲笑の手つきで友吉を指す。他の一同もゲラゲラ笑い出す。刑事たちまで笑っている。しかし、それらぜんぶの声が、列車の音に消されて全くきこえない。……友吉、一同を見まわし、又、治子と俊子の方を見て、ニコッと笑う。その白い笑顔を、あけがたの薄桃色の陽の光が照らし出している。
 やがて、トラックが、奥へ向って動き出す。地ひびきを立てて通過しつつある列車。……その、ツンボになるように激しいひびきの静けさの中に、よく見えない眼をこらすようにした俊子と、俊子に肩をかかえられて苦しみをこらえながら、横顔を見せた治子が、遠ざかり行くトラックを見送っている)
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底本:「三好十郎の仕事 第三巻」學藝書林
   1968(昭和43)年9月30日第1刷発行
初出:「人間 別冊 人間作品集」
   1948(昭和23)年6月
入力:伊藤時也
校正:伊藤時也・及川 雅
2009年4月9日作成
青空文庫作成ファイル:
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