て――もと広島の中学でしばらく私が教えてあげて、――御両親が向うにいられて、こんどやって来られた方で――
木山 (竜子に手つだって、西洋皿にカンヅメの中味をあけていたのが此方を向いて) こんばんは。
友吉 ……(木山に頭をさげる)
竜子 (デセールをもった皿を奥のテーブルの上に置き)どうぞ先生。小笠原さんも。すぐお茶を入れますから。(奥へ去る)
人見 (それにエシャクして置いて、友吉に)今夜は忙しいものだから――
友吉 ……(急にさびしそうな顔になる)はい。僕はすぐ、なんです、失礼しますから。……(すこし離れた奥では木山が二つ三つのイスをテーブルのわきに持って行き、小笠原を招じて掛けさせ、自分が先ず皿のデセールを一つ取って食べて見せ、小笠原にすすめている)……治子さんの事で、チョットあの――
人見 治子? ……なんでしょう[#「なんでしょう」は底本では「なんでしよう」]?
友吉 心配になったもんですから――もっと早く来よう来ようと思っていたんですけど、ツイ――ぼく、この頃、時計の仕事がタマにしかないもんで、昼間、あの、クズ屋みたいな事をしているもんですから――暇がなくて――
人見 いや、そりゃ、妹の事については、私も心配しているんだが――なんしろ、この半年ばかりフッツリ寄り付かないし、訪ねて行っても会いたがらない。この三、四カ月、だまって、どっか越して行ってしまって、どこに居るか――君は会ったの?
友吉 たまにヒョッコリ、僕んとこに、あの――
人見 へえ? すると――?
友吉 たいがい僕のルスにみえて、俊子に、あの食べる物や、金をくだすって、そいで――二、三度は、ねむいから、いっとき寝させてくれといって半日寝て、そいから又どっかへ――僕も治子さんの所は、よく知らないんです。
人見 ふーむ……。
友吉 ここんとこ、しばらく、見えないんですが、二、三日前、人からヘンな話を聞いたもんですから、心配になって――
人見 どういう仕事をしているんだろう、そいで?
友吉 僕にもわかりません。会社の事務の方はトックにおよしなすったようですが、その後――二、三日前に治子さんを見たといって話してくれたのが、貴島――貴島宗太郎といって、あの、良い人間ですけど、でも、妙な所にばかり出入りして、あの、いろんな事を知っている人で――
人見 ダンスホールで見かけたという人がいたんだが――
友吉 
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