? あたりめえだあ。だもの、そこい、断食するんだって? ヘッ、そいつは、願ったりかなったりだろう、笑わしちゃいけねえや、そうじゃないですかね。ホッ、プップッ、おおけむいや! フウ!(といったのは、俊子が貴島や治子にお茶を入れようとして、よく見えない目で室の隅のシチリンに、紙くずや木の枝などを入れて、火をつけたのが、ひどくいぶって来る、その煙にむせたのである)どうも、まるで、こいつはタヌキかムジナの穴だあ! ヘッヘヘ、ホウ! ね、そうだろう、エスさま? あんだけの兵隊が、おれたちのために死んだんだぜ? え? そいで、残ったおれたちが、おれたちだけが、無事ソクサイで過ぎて行くとあっちゃ、あんまり片手落ちじゃありませんかい? 虫がよすぎるよ、ねえ! フウ! だからさ、だから、ここんとこ、五年十年、日本人は、鬼になってもジャに[#「ジャに」は底本では「ジヤに」]なっても、とにもかくにも、生き抜いて行けるかどうか、善いも悪いもヘッタクレもねえや、やってみなきゃならねえんだ! ほかの事あ、その後で聞こうじゃねえか! ねえ、エスさん!(もうもうとした煙にむせながら、貴島のおしゃべりは、まだやみそうでない)

        10[#「10」は縦中横]

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 貴島のおしゃべりにダブって、三、四人の人が斉唱するサンビ歌の声。(クリスマス聖歌)
 会堂。冬の夜。
 人見勉の教会の内部。ガランとしているのは以前どおりだが、それでも、壁や窓など、かなりつくろってあるし、ソウジは行きとどいているし、集会用のベンチがキチンとならべてある。説教壇のわきに立てられたかなり大きなクリスマス・ツリイ。それに向って、人見勉が黒い背広をキチンと着、ネクタイもしめて、デコレーションをくくりつけている。その向うに立って、それを手伝っている木山譲二。進駐軍の制服を着ている。デコレーション用の小物が、説教壇のテーブルの上に山もりになっている。他に、食料品の入ったボール紙の箱やカンヅメなどが、別のテーブルにもりあげてある。教会の会員で中年の富裕らしい和服の婦人の小笠原が、説教壇の背後の壁に三色のモールを張りめぐらしている。三人は、微笑をうかべながら、余念なくそれぞれの仕事をしながら、声を合せてサンビ歌を歌っている。木山は、歌詞が日本語では歌えないのか、メロディ[#「メロディ」は底本では「メロデ
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