礼。
友吉 貴島さん、あの先日の時計は、まだこうしてもうチョットあの――
貴島 ああ、いいですよ。いつまでもいいんだ。どうです、俊ちゃん、その後、眼の方は?(俊子が返事をするのも待たずに治子に向って)いえね、私あ、この少しばかり古物を扱っている貴島宗太郎と申しましてね、ヘヘ、ケチな男です。どうぞよろしく。なにね、片倉さんを好きで――いえ、好きといっちゃなんですがね、この、いえ、戦争中、ケイサツでいっしょに、この、ヘヘ、いろいろお世話になりましてね、なんしろあなた、いまどき、変った人だ。ハハ、だんだん見ていると、とんでもねえ、エレエというのかバカというのか、ヘヘヘ、まあ、神さまみてえな――つまるところが、エスさまあでさあ。おどろいたねえ。おどろきました! そいからまあ信者になったのです。信者といったって私あ、ヤソなんかの事あ、わからんですよ。ヤソだろうとクソだろうと、見さかいのない野郎でさあ、だから信者といっても、神さまの事じゃ、ごいせん。つまり片倉友吉さまでさあ。いや、まったく。片倉友吉さまの信者でさあ。ヘヘヘ、そいでまあ。(いいながら、ふところから、懐中時計を二つばかりと腕時計を一つ取り出して、友吉の机の上にのせる)……はい、これ、やっといて下さいよ。いや、ブンカイそうじをしてね、こわれてるのは、なおしといてくれりゃいいんだ。なんなら、誰かほしいという人があったら、売ってくれてもいいよ。値だんは、あんたにまかせようじゃないか。(又、もう一つ懐中時計をポケットから取り出す)ええと、こんで、おしまいだ。ヘッヘヘ、信者だからねえ、私あ。そんでまあ、片倉さんがこうして、こんだけエライ人が、こんだけの腕を持ちながら、こうして困っているのを見ていると、まったく、腹が立ってね、だから私が言うんだ。闇取引であろうが、なんであろうが、おやんなさい、私が方々のワタリはつけてあげる。今どき、そんなリョウシンのヘチマのいっていても、誰もホメちゃくれねえ、だいたい政府にしてからがタバコだのなんだの、法外もなく値上げをしてヤミをしょうれいしているようなもんだしよ。タカラクジなんてもなあ、ありゃお前さんバクチだもんねえ、つまりヤミやバクチは、おかみですすめているんだ。おれたちが、これをやらなきゃ、政府の方針に反するからね。ハハ……まあまあ話がさ、スのコンニャクのといったところで、生まれてきたん
前へ
次へ
全90ページ中69ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング