―(だまってしまう)
北村 ……(その友吉の姿を、つらそうな眼をして、ボンヤリ見つめている)
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(そこへ、右手の小道の方から、人見治子が近づいて来る。みすぼらしいコートに、モンペ式の黒いズボン。以前は少女らしくフックリしていた線は彼女の顔からソギ落ちてしまって、鋭どくフケこんで、無口に無表情になっている。今日はともいわないで、あがりばなに立ち、突伏している友吉と北村と奥に寝ているリクをチラチラと見てから、北村に黙礼する)
[#ここで字下げ終わり]
北村 ……や、今日は。……どうです?
治子 はあ。……(相手になろうとせず、ゲタをぬいであがり、眠っているリクの方へ行く)
北村 その、事務員の方の仕事は、うまく行っていますか?
治子 ええ。(いいながら、リクの額にソッと手を当ててみたりする。その態度に取りつきばがない)
北村 ……じゃ。(と腰をあげて)じゃ、又来るからね、友ちゃん。(友吉は、まだジッと祈っているようなかっこうをしている)……あんまり、考え込まないで――こんだ、仕事が有ったら、持って来るから。……(治子に)治子さん、じゃ――(右手へ去って行く)
治子 ……失礼しました。……(リクの着ている薄いフトンのスソから手を入れてその足にさわって見たり、枕もとを片附けたりしてから、あがりばなの所へ来て坐る。そして、表情を動かさないままで、友吉の姿をしばらく見ている。間)……俊ちゃんは?
友吉 …………。
治子 ……私ね、明日からダンサーになるの。……学校時代の友達がやってるから、なんでも教えてくれるんですって。――近頃じゃ、すぐにやれるんですって。着物もその人が貸してくれるの。――(友吉動かない)どうしたの?
友吉 …………。
治子 今のアパートから、追い立てをくって、いよいよもう、居られなくなったの。部屋代をいっぺんに五百円にするというのよ。……そうでなくっても、今の会社の月給は六百円で、食べるだけでも、たりなくなって来たし……ホールに出ると、その日から百円ぐらいにはなるんですって。……私、もう、こうなったら、なんでもやるわ。……だって、このままで行ったら、私もだけど、それよりもお母さんも俊ちゃんも、医者や薬はおろか、あなたも、みんな、カツエて死んでしまう。……(しばらくだまっていてから)お祈り?
友吉 ……(顔をあげる。ボンヤリした眼つきで治
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