いうんでね。
友吉 ……そうでしょうか?すると――いえ、実は僕も家族があの、――病人が居たり、弟はああして死んでしまったし、それに僕の手がこんなもんで、ほかの仕事を捜すといってもチョット有りません、暮しが苦しいもんで――又、こっちに使ってもらえないだろうかと思って、先日頼みに来たら、課長さんが、使ってやろうというようにおっしゃってくれたもんですから、実は今日やって来たんです。すると、しかし――
司会 どうりで、人事課に居たんだね? そうかね――しかし、そりゃ君、一方に於て百人以上も首を切ろうとしているなかで、君を採用しようというのは、そいつは、マユツバもんだし、もしそれが事実だとすると、君は一時会社をよして、組合に加入していない人間だから――
声二 なあんだ、なあんだい! スキャップじゃねえか、すると争議やぶりだ!
声一 エスさまあ、おれたちを裏切りにおいでになったんだあ!
友吉 ……(裏切りといわれて、しんけんになり)そんな事はありません!そんな諸君を裏切るなんて、そんな――。僕は、ただ、どうしても暮しが立たないもんだから、なんとかして、この時計の仕事でなんとかしたいと思ったもんだから――諸君を裏切ろうという気持なんか、僕には、ミジンもないんだ。
司会 そうだろう、そうだと思う。君にそんな気持がない事は信ずるよ。しかしだなあ、会社としてはこの際組合の人間を首切ってしまって、ウンと人数をへらして、代りに会社のいうなりになる人間だけを入れてやって行きたいと思っているんだからね――それに君は組立ての方では腕が良かったんだし、この際、会社では君のような人間をほしいんだ。だから、君が入社すれば、君自身われわれを裏切ろうという気はなくても、結果としてはだな、ぼくらを裏切ることになるんだよ。だから――
友吉 そいじゃ、僕は入社しなくても――いえ、入社しません。そんな僕は――でも、しかし、僕は思うんです。ストライキなど、しないで、もっとこの両方で話し合って、やって行くようにです。――できないでしょうか? いえ、僕には、めんどうな理屈はわかりませんけれど、こんなふうになって、日本はメチャメチャになってしまって、すべての事が乞食と同じような事になってしまったんですから、この、以前のように資本家だから、労働者だからということで対立して、あらそって見ても、事実、資本家の方も苦しくて成り立
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