のことを、いとしいと思うたら、帰れ、帰って、岩村田の家の火じろの所で、ぶっ坐っていろ。そんで源太郎も、いい戦が出来るだ。……源太郎も、それや、手紙ではお前に気の毒で、どっちに居てもええなんて言ってるが、ホントは帰って欲しいだ。
女 ……だども、うちのおっかさんが、どうでも反対じゃと言うて――
百姓 反対してもかまん。何を言ってもかまんから、うっちゃって、明日にでも突っ走って行っちまえ。後は俺がええ具合にしてやらあ。
女 へえ、んじゃ、わし。岩村田へ帰りやす。
百姓 そうしろ、そして、どんな辛え事があっても、もう川上にゃ戻って来るな。俺が辛抱すれば源太郎がシャンとして[#「シャンとして」は底本では「シヤンとして」]やってると思え。俺が辛抱出来ねば、源太郎、どっかでつっころげて、敗け戦あしてると思え。そう思って、岩村田の火じろに、ぶっ坐っているだ。たとえ、ぶたれても、蹴られても、源太郎のこといとしいと思うならば、動くな。
女 ……よくわかった。そんじゃ、川上のおっかさんの事、よろしく頼みやす。
百姓 ええともよ。全体お前のおっかあなんて言うものは、カンばかり強くって、なんでも直ぐに悪い方悪
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