つな東京で、すぐ明日からも働き場所をめっけて、故郷に仕送りしなければならぬ生活の方が、まだ何倍も不安であった。足をかわすたびにポクリ、ポクリと、足くびまでうずめる砂ほこりが、尻ばしょりしている毛ずねまで染める。暑い午下《ひるさが》りの熱気で、ドキン、ドキンと耳鳴りしている自分を意識しながら歩いている。その眼路《めじ》のはるかつきるまで、咽喉《のど》のひりつくような白くかわいた道がつづいていた。



底本:「徳永直文学選集」熊本出版文化会館
   2008(平成20)年5月15日初版
底本の親本:「あぶら照り」新潮社
   1948(昭和23)年10月15日
初出:「新潮」
   1948(昭和23)年1月
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2008年12月4日作成
青空文庫作成ファイル:
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