から、數學者で新伯爵スタンホープの發明後五十年である。「ワシントン・プレス」が上海を經て長崎奉行所の印刷工場に使用されたか知れぬといふ川田久長氏の説を假に事實とすると安政年間であり、それを別としても開港以後上海經由で輸入された形跡はたぶんにあり、昌造が薩摩の島津屋舖から慶應年間に讓りうけたハンドプレスや、明治初年に平野富二が銀座の古道具屋から發見した某大名からの流れものといふ形状不明のハンドプレスなど考へあはせると、尠くとも明治以前であり、發明後三十年ないし四十年である。ドイツ人ケーニツヒの「シリンダー式印刷機」を東京朝日新聞社で使用したのが明治十年だ。西暦にすると一八七七年だから、發明後六十年である。フランスで發明された「マリノン式輪轉機」は新聞印刷機として日本へ最初に入つてきたものだが、それが明治の三十年だ。「マリノン式」の完成は一八七〇年代だから、發明後二十年そこらである。
 安政の開港以後ないしは明治維新の前後、國内事情と對外關係の機微な事情によつて、輸出國もまた輸入方法やその徑路も複雜な變化があるけれど、印刷機といふものは、發明後比較的早く容易に渡來したことがわかる。つまり印
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