らう。

      四

 ヒヨイと摘んでステツキへ
 ケースの前の植字工
 その眼が速いかその手はすぐに
 すばやく活字を摘みあげ
 一語又一語と形づくる
 おそいが併し堅實に
 おそいが併し確實に
 一言一言とつみ重ね
 そして尚つづけられる
 火の言葉は灼熱と化し
 無音の不思議な言葉は
 全世界をへめぐつて
 怖るべき戰慄を起さしめ
 抑壓された足|械《かせ》をこぼつ
 言葉は正しき鬪ひにおいて
 我に三倍する劍の力をうち破る
 人は活字を鉛の集合物と見做し
 これを指先にて弄ばんも
 印刷者は微笑をもて一字又一字
 恰も正確な時計の如くに拾ひあげ
 鼻唄まじりに文字を組み
 己が仕事に熱中してゐる
 俺のやうにこんな簡單な器具で
 世の中を支配してゐる者は他にあらうか?
 ちやちな印刷機と鐵のステツキ
 それにホンの少しばかりの鉛の花型
 白い紙に黒いインキ
 ただそれだけだ
 正義を支持し不正をこぼつ
 この印刷者の力に刄向ふ者は誰か?
 この詩、「活字の歌」の原文を私は知らない。あまりすぐれた飜譯ではないやうだが、「世界印刷年表」に收録されてゐるもので、世界最初の印刷雜
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