いまは反對するものが二人だけになつた」といふのにみても、表だつた記録にはみえなくても、鎖國に對する反對空氣は、甚だ複雜微妙ながら、相當つよく生れてゐたか知れぬと察せられる。
その開國進取にもいろいろあつたらう。當時の困憊した經濟事情からただ利をもとめるやうなものもあつたらうし、齊昭が慨いたやうに士氣墮弱から安きにつく輩もあつたか知れぬ。それと同時に、深夜アメリカ軍艦を訪れ、祕密渡航を企て、捕はれた吉田寅次郎らの如き、尠くとも「進取」があつたのである。國法を犯しても宇内の知識をきはめ、もつて皇國の安泰をはからんとするやうな「開國進取」である。「開國」の文字も、安政末期以後の十餘年間は、複雜多岐な政治性を帶びてきて一概に云ひ難いが、この頃まではまだまだ素朴で、皇國の安泰と、武器のみに限らず文明をきはめて我物とする意慾とが、なだらかに流れてゐたと思はるる。ロシヤ使節の蒸汽軍艦に招待された日本人たちが、いかに知識慾に燃え、進取性に富んでゐるかについて、ゴンチヤロフは驚異をもつてそれを書いたが、ペルリの「日本遠征記」もそれを書いた。「――下田でも箱館でも印刷所を見なかつたが、書物は店頭で見受け
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