な一克さをひそめてゐる、當時の科學者的な、一日本青年を想像するのである。
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        開港をめぐつて


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      一

 昭和十七年の夏の終り頃には、私は麻布二之橋のちかくにあるS子爵邸のS文庫に、書物をみせてもらふために通つてゐた。夕刻ちかくになると書物を棚にもどして、子爵邸前のだらだら坂をおりてくるが、どうかしたときは二之橋の欄干につかまつて溝《どぶ》ツ川のくろい水面をみつめながら、ボンヤリ考へこむことがあつた。
 自分は活字の歴史をさがしてゐるのに、何で「嘉永の黒船」や「安政の開港」などを追つかけまはしてゐるんだらう?
 一種の錯覺に似た、氣弱な不安が起るのであつた。たとへばS文庫のうすくらい片隅の机で、私は借りた書物のうちから、はじめは「昌造」の名ばかりさがしてゐる。幕府時代の公文書とおぼしきものから、年時や事件を繰りあはせてさがしてゆく。ちかごろでは「本木」とか「通詞」とか「活字板」とかいふやうな文字は、どんなに不用意に頁を繰つてゐても、むかふから私の眼のなかにとびこんでくるやうになつてゐたが、またそれと同時に、
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