の日が来ると、両手に六本ずつの指を持って生れる筈の水車屋の息子が彼のラッパを吹きならすでしょう。すると、馬は足踏み嘶いて、勇ましい騎士達は目を醒し、馬に跨って軍《いくさ》に向って進むのです。
七年に一度ずつ、まわって来る或る晩、太守が革船山を騎り廻している時に偶然通りがかった者には巖窟の入り口が見えると云うことがあります。凡そ百年ばかり昔、夜道でおくれ、一杯機嫌の一人の博労が、燈火のついている巖窟を見つけ、中に入って行って見ました。燈火、四辺のひっそりした静かさ、武装した戦士達の有様は、博労をぎょっとさせるに十分でした。彼は酒の酔もさめて正気になりました。けれども、手がひどく震え出して、馬具を石敷きの床の上にとり落して仕舞いました。馬銜《くつわ》の音が長い洞穴内に反響すると、博労のすぐわきの戦士の一人が、少しばかり頭を持ちあげ、太い嗄れ声で訊きました。
「もう時が来たのか?」
博労は気転をきかせて答えました。
「いやまだです。もうじきでしょう」
重い兜をかぶった戦士の頭は又卓子に突伏しました。
博労はやっとの思いで巖窟を出ました。他の者が同じようなことに出会ったと云う話をまだ一
前へ
次へ
全12ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ケネディ パトリック の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング