わあ半馬鹿の彼をからかいました。二通りの音楽がすむと、笛吹きは皆に、その晩自分の出会った事柄をすっかり話して聞かせました。
 翌朝のことです。彼の阿母さんは、ゆうべ彼がパトリック山から貰って来た黄金の片を見なおそうと仕舞って置いた処に行きました。処がどうした事でしょう。黄金のあった場所には何もない、只木の葉ばかりが遺っていました。
 笛吹きは教父の処へ出掛けて行って昨夜からの仔細を話しましたが、教父は彼の云う一言も本当にはして呉れません。笛吹きは笛をとり出して吹きました。笛からは、雌雄鵞鳥の鳴き声がグーグー、ガアガア鳴り出しました。
 教父は
「出て行け。帰りなさい。悪もの奴!」
と怒鳴りました。が、笛吹きは云うことをきかず、元の笛を出してよい音で吹き鳴らして見せ到頭自分の云った事が皆本当であるのを教父に判らせました。
 その時から彼の死ぬ迄、ガルウェーに彼ほどうまい笛吹きは他に一人もいませんでした。

       ジェラルド太守の魔法

 アイルランドの昔、フィッツジェラルド家に一人の偉い人がいました。彼の名はジェラルドと云うのでしたが、その家の人を皆好きであった其時のアイルランド
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