《おどろ》きは後から考えれば無駄でした。鷹は余りひどい勢いで部屋に飛び込んだので卓子に躯をぶっつけ、そのまま死んで仕舞ったのでしたから。
夫人は鷹の死骸から、今の今まで金翅雀のいた処に眼を移しました。けれども悲しいことに彼女はもう二度とジェラルド太守に会うことも出来なければ金翅雀を見ることも出来ませんでした。
それから七年に一度ずつ、軍馬に騎《の》った太公がキルデーアの革船と呼ばれている山の廻りを騎り廻します。太守がいなくなった時、その軍馬の銀の蹄鉄は半|吋《インチ》の厚さがありました。この銀の蹄鉄が猫の耳ほどの薄さにすり減ればジェラルド太守は再び生きた人間の世界に戻ることが出来英国人と一つの大戦争をして、四十年間アイルランドの王様になると信じられています。
ジェラルド太守と彼の戦士達は、今ムリイマストの城の下にある長い巖窟の中で眠っているのです。洞穴に沿うて真中に一つの卓子があります。太守が卓子の一番上座につき、両側にずらりと戦士等がすっかり武装を調えたまま卓子に頭をもたせて眠っています、戦士等の乗馬も、鞍を置き手綱をつけられて、主人達の後の両側にある馬部屋に立っています。約束
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