人は、彼をジェラルド太守と呼びならわしていました。彼は、ムリイマストに大きな城を持ってい、英国の政府が無理を云ってアイルランドを苛めようとすると、いつでもそれに向って国を守るのは彼でありました。彼は戦いの素晴らしい大将であり、上手な武術者であった上に、非常に魔法が出来ました。そして、彼が好きなものに何でも自分の形を変える事が出来たのでした。
 彼の夫人は、この事を知っているのでよく良人に、自分もその珍らしい秘密のお仲間入りをさせて下さいと頼みましたが、彼は決して其を許しませんでした。
 夫人は、特別ジェラルド公が何か異う物の形になっている処を見たがりました。然しジェラルド太守は其那時には何とかかとか云って彼女を去らせて仕舞います。女は辛棒づよいものですから幾度いけないと云われても願うので、到頭太守は、彼が人間の形から違ったものになっている間に、若し彼女が一寸でも吃驚《びっくり》したり恐れたりすると、もう彼は幾百年も元の人間の体には戻れないと云う事を話して聞かせました。其那にじき驚いたり可怖《こわ》がったりするようなら彼女は偉いジェラルド太守の夫人にふさわしくありますまい、どうか思いつき
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