白鵞鳥がやって来ました。そして、彼に新しい一組の笛をくれました。
 半馬鹿の笛吹きを肩車にのせ、プカは間もなくダンモーアに着きました。そして、笛吹きを始めに出会った小さい橋の上に降し、
「お前は今迄持っていなかった二つのもの――悪い事をしてはいけないと考える良心と音楽とを授かった」
 さあ家に帰れと云いました。
 彼は真直家路につき、阿母さんの家の戸を叩いて呼びました。
「入れてお呉れ。私は王みたいに金持ちだ。アイルランドで一番上手な笛吹きだ」
 阿母さんは中から答えました。
「お前はお酒に酔っているね」
「其れどころか! 一滴だって酒なんか飲みはしない」
 阿母さんは彼を家に入れてやりました。彼は母親に、貰って来た黄金を与え
「待ってくれ、私がやる音楽を聴くまで待ってくれ」
と願いました。
 笛吹きは笛の上にかがみこみ、吹き始めましたが、音楽が響くどころか笛の中からはアイルランド中の雌雄の鵞鳥が一どきにガアガア鳴き立てるような騒々しい音が起りました。このひどい騒ぎで近所の人が起きて来ました。
 そして、笛吹きが元から持っていた笛で今度はちゃんと美しい節廻しの音楽をきかせてやる迄、わあ
前へ 次へ
全12ページ中5ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ハイド ダグラス の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング