ほんとにあった事[#「ほんとにあった事」に傍点]でないと困るぜ!」
「ああ、そこは大船に乗ったつもりでいたまえ。僕がこれから話そうというのは、本当も本当、正銘いつわりなしの実話な上に、その登場人物がまた、僕にとって頗る親密かつ親愛なる連中なのさ。実をいうとその主人公は、ほかならぬ僕の実の弟なのだ。あれは、たぶん諸君もご承知かと思うが、なかなか心がけのいい役人でね、それなりにまた、世間の評判もなかなかいい男なんだよ。」
一同は異口同音に、いかにもそれは兄貴のいう通りだと相槌をうった。のみならずその多くは、この語り手の弟なる人物は、まったく一点の非の打ちどころもない立派な紳士だと、太鼓判をおしさえしたのである。
「でまあ」と、相手はこたえた、――「つまり僕は、諸君が立派な紳士だと言ってくださる、その男のことを話そうというわけなのさ。」
※[#ローマ数字2、1−13−22]
そう、三年まえの話だがね、弟はクリスマスの休みを利用して、田舎から僕のうちへ泊りに出てきた。当時あいつは、田舎まわりの役人をしていたのだ。ところがその様子が、いつにない猛烈な剣幕でね、――乗り込んでく
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