に傍点]これこれということになると、そりゃおかみさん、誰にだってはっきりとは申し上げられますまいけれどね、それはまあそうとして、きっと何かありますよ。」
「それまではずっと、お月さまの夢を見ていたんだがね、それから猫が出て来たのさ」と、カテリーナ・リヴォーヴナは先をつづけた。
「お月さんなら――赤ちゃんでございますよ。」
カテリーナ・リヴォーヴナは頬を紅らめた。
「セルゲイもここへ呼んで、相伴をさしておやんなさいますかね?」と、そろそろ心得顔でせせり出しそうな気合いを十分に見せながら、アクシーニヤはお内儀さんの気を引いてみた。
「ええ、いいわ」と、カテリーナ・リヴォーヴナは応じた、――「なるほど、そうだったわね。ちょっと迎えに行ってきておくれ、お茶を御馳走してあげるからって。」
「それそれ、わたしもそう思っておりましたんですよ、ここへ呼んでやろうとね」とアクシーニヤは釘をさして、よちよち家鴨《あひる》のように庭木戸の方へ歩み去った。
カテリーナ・リヴォーヴナは、セルゲイにも猫の話をして聞かせた。
「なあに、気の迷いさ」と、セルゲイは片づけた。
「でもさ、気の迷いなら迷いでいいけど、
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