夜が更けたかと思うと、そっと戸があいたので、彼女はいきなり跳び起きた。わくわくしながら、暗い廊下にセルゲイを両手でさぐった。
「おれのカーチャ!」と、ぎゅっと抱きしめざまセルゲイが言った。
「あ。あんた、憎らしい人!」と、涙ごえでカテリーナ・リヴォーヴナは答えると、そのまま両の唇で吸いついた。
 番兵が廊下を行ったり来たりしていて、ふと立ちどまって長靴の先に唾をする。そしてまた歩きはじめる。戸のなかでは疲れた男囚たちがいびきをかき、鼠がストーヴのかげで鵞ペンをかじる。コオロギがわれ劣らじと声をはりあげて歌っている。カテリーナ・リヴォーヴナは、まだうっとりとわが身の幸に酔っている。
 だがやがてその陶酔にも倦きがきて、散文が聞えだすのはけだし止むをえない。
「死にそうに痛むんだよ。くるぶしの附け根から膝がしらのとこまで、骨ががくんがくんて唸りやがるんだ」とセルゲイが、廊下の隅の床べたにカテリーナ・リヴォーヴナと寄り添って坐りながら、ぐちをこぼす。
「どうしたらいいだろうねえ、セリョージェチカ?」男の外套の裾にもぐりながら、彼女が心配そうにきく。
「まあ仕方があるまいな、カザンの病院に入れ
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