す刀は」
「そうです、一つお眼にかけましょう」
 若いしゅうが五、六本刀をはずして私達の前に置きました。
「ぬいて御覧あそばせ」
 僕もラキ子さんもこわごわ手にするとその重いこと、
「それは本身の鉄です。こちらがジュラルミン、そこにあるのが樫の身に銀箔を張ったものです。なかなか種類がございましょう」
 どれも、これも、その光はそこびかりがして、何か人の血をすうようなけはいがするではありませんか。
「その木の身の奴は軽くってあつかいよいのですが、やはり本身のものはずっしりと、腕にこたえて調子がようございます。そちらのジュラルミンは御覧の通りまるで魚の歯のように、はこぼれがしているでしょう。斬り結ぶ時、はがこぼれるのですよ」
「こんなになるぐらいでは、すごい力で刄合せをするのですね」
「本気ですよ。それでないと気迫がやはりお客様に感じないのです」
 馬鹿に静かだと思っていたらラキ子嬢、手ごろのやつのつかをずッしりとにぎって眼をすえている。
「狂人に刄ものというたとえがありますよ、ちょいとその刀をおかえしなさい」
「……」
「それではおいそがしいところを失礼しました、さようなら」
 桑原々々
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