が段々明るくなっています。晩餐を食べましたのは、市外の公園の料理店でございました。ちょうど宅はベルリンに二週間ほど滞留しなくてはならない用事がありましたので、わたくしはひとりでその宴会へ参りました。夜なかが過ぎて一時になりましたころ、わたくしは雑談をいたしているのが厭になって来ましたので、わたくしどもを呼んで下すった奥さんに暇乞をいたしましたの。その時あなたはその奥さんの側に立っていらっしゃって、わたくしの顔をじっと見ていらっしゃいましたの。
男。その時の事ですか。もう分かりました。
貴夫人。まあ、聞いていらっしゃいまし。その席であなたは最初からわたくしをひどい目に逢わせていらっしゃいましたの。そう。ちょうど三週間ばかり前からあなたわたくしを附け廻していらっしゃったのです。それでいてわたくしに何もおっしゃるのではございません。ただ黙って妙な顔をしてわたくしを困らせていらっしゃいましたの。顔ばかりではございませんの。妙な為打《しうち》をなさるのですもの。お据わりになったかと思えば、すぐお立ちになる。またお据わりになる。戸の外へおいでになったかと思えば、すぐ這入《はい》っていらっしゃる。つ
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