フようになっているラシイヌの集《しゅう》を小包で送り返して遣る。早く谷中へ帰って、あれを郵便に出してしまいたい。そうしたらさぞさっぱりするだろう。
こう思うと、純一の心は濁水に明礬《みょうばん》を入れたように、思いの外早く澄んで来た。その濁りと云うものの中《うち》には、種々の籠《こ》み入った、分析し難い物があるのを、かれこれの別なく、引きくるめて沈澱《ちんでん》させてしまったのである。これは夜の意識が仮初《かりそめ》に到達した安心の境《さかい》ではあるが、この境が幸に黒甜郷《こくてんきょう》の近所になっていたと見えて、べろべろの神さんの相変らず跳梁《ちょうりょう》しているにも拘らず、純一は頭を夜着の中に埋《うず》めて、寐入ってしまった。
翌朝《よくあさ》純一は早く起きる積りでもいなかったが、夜明《よあけ》近く物音がして、人の話声が聞えたので、目を醒《さ》まして便所へ行った。そうすると廊下で早立ちの客に逢った。洋服を着た、どちらも四十恰好《しじゅうがっこう》の二人である。荷物を玄関に運ぶ宿の男を促しながら、外套《がいとう》の衿《えり》の底に縮めた首を傾け合って、忙《せわ》しそうに話を
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