フリツツはぢつとそれを見送つてゐた。その時少年の心に、この人生をおもちやにしようとしてゐる、色の蒼い弱々しい小娘に対する恐怖が、圧迫するやうに生じて来た。そして娘が跡へ引き返して来て、自分を見附けて、知らぬ世界へ引き摩つて行くのだらうとでも思つたらしく、フリツツは慌てゝ停車場を駆け出して、跡をも見ずに町の方へ帰つて行つた。
底本:「鴎外選集 第14巻」岩波書店
1979(昭和54)年12月19日第1刷発行
初出:「駆落」1912(明治45)年1月1日「女子文壇」八ノ一
原題:Die Flucht.
原作者:Rainer Maria Rilke, 1875−1926
翻訳原本:R. M. Rilke: Am Leben hin.(Novellen und Skizzen.)Stuttgart, Verlag von Adolf Bonz. 1898.
入力:tatsuki
校正:小林繁雄
2000年5月5日公開
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