見《み》えない。主簿《しゆぼ》と云《い》へば、刺史《しし》とか太守《たいしゆ》とか云《い》ふと同《おな》じ官《くわん》である。支那《しな》全國《ぜんこく》が道《だう》に分《わか》れ、道《だう》が州《しう》又《また》は郡《ぐん》に分《わか》れ、それが縣《けん》に分《わか》れ、縣《けん》の下《した》に郷《がう》があり郷《がう》の下《した》に里《り》がある。州《しう》には刺史《しし》と云《い》ひ、郡《ぐん》には太守《たいしゆ》と云《い》ふ。一|體《たい》日本《にほん》で縣《けん》より小《ちひ》さいものに郡《ぐん》の名《な》を附《つ》けてゐるのは不都合《ふつがふ》だと、吉田東伍《よしだとうご》さんなんぞは不服《ふふく》を唱《とな》へてゐる。閭《りよ》が果《はた》して台州《たいしう》の主簿《しゆぼ》であつたとすると日本《にほん》の府縣知事《ふけんちじ》位《くらゐ》の官吏《くわんり》である。さうして見《み》ると、唐書《たうしよ》の列傳《れつでん》に出《で》てゐる筈《はず》だと云《い》ふのである。しかし閭《りよ》がゐなくては話《はなし》が成《な》り立《た》たぬから、兎《と》も角《かく》もゐたことにし
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