そば》に甚だ深く造りたる凭掛《よりかかり》の椅子《いす》あり。凭りかかる処《ところ》は堅牢《けんろう》に造りありて、両肱《りょうひじ》を持たする処を広くなしあり。この椅子に向き合せて、木部を朱色の漆にて塗りたる籐《とう》の椅子あり。奥の壁は全く窓にて占領せられおる。左手の壁に押付けて黒き箪笥を据えあり。その上に髑髏《どくろ》に柔かき帽子を被《かむ》せたるを載せあり。また小さき素焼の人形、鉢、冠《かんむり》を置きあり。その壁には鉛筆画、チョオク画、油絵|等《とう》のスケッチを多く掛けあり。枠に入れたると入れざると交《まじ》れり。前手《まえて》に小さき円形《まるがた》の鉄の煖炉《だんろ》あり。その上に鍋《なべ》類を二つ三つ載せあり。黒き箪笥の傍《そば》に、廊下より入《い》り来《く》るようになりおる入口あり。右手の壁の前には、窓に近き処に寝椅子あり。これに絨緞《じゅうたん》を掛く。その上にはまた金糸《きんし》の繍《ぬい》ある派手なる帛《きれ》を拡《ひろ》げあり。この上の壁は中程を棚にて横に為切《しき》りあり。そこまで緑色の帛を張りあり。その上に数個の額を掛く。小さき写真の上を生花《せいか》に
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