パシエンカが今台所で、粉に酵母《もと》を交ぜて捏ねることを女中のルケリアに教へてゐると、そこへ六つになる孫娘のコリヤが穴の開いた所へ填め足しをした毛糸の靴足袋を、曲つた脛に穿いて、胸に前垂を掛けて、何事にかひどく驚いた様子で駆け付けて来た。「お祖母《ば》あさん。恐ろしいお爺いさんが来て、お祖母あさんにお目に掛かりたいつて。」
 ルケリアが外を覗いて見た。「ほんに巡礼らしい爺いさんが参つてゐます。」
 パシエンカは痩せた臂に付いた粉を落して、手尖の濡れたのを前掛で拭いた。そして部屋に往つて五コペエケンを一つ持つて来て遣らうと思つた。併しふと銭入に十コペエケンより小さいのがなかつた事を思ひ出して、それよりはパンを一切遣る事にしようと思案して、押入の方へ往つた。ところがまだパンを出さぬうちに、少しばかりの銭を惜んだのが恥かしくなつて、パンを切つて遣る事は女中に言ひ付けて置いて、その上に十コペエケンをも取りに往つた。「これが本当に罰が当つたと云ふものだ。ちよいと吝《けち》な考を出したゞけで、遣る物は倍になつた。」パシエンカは心中でかう思つた。
 パシエンカは「余り少しだが」と断を云つて、パン
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