めてゐる人間の為めには、神も何もない。己はこれから新に神を尋ねなくてはならない。」
かう思ひ立つたセルギウスは、山を出てからパシエンカを尋ねたまでと同じやうに、村から村へとさまよつた。一人で歩く時もある。外の巡礼共と一しよに歩く時もある。そしてクリストの御名を唱へて、食を求め、宿を借る。その間には意地の悪い百姓の女房に叱られる事もある。酒に酔つた百姓に嘲《あざけ》られる事もある。併し大抵は飲食にありつき、銭をも貰ふ。セルギウスの風采が立派なので、尊敬してくれるものがあるかと思へば、又どうかするとあんな立派な奴が落ちぶれて、好い気味だと思ふらしいものもある。併し詰りはセルギウスの方で飽くまで優しくするので、どんな人にも打ち勝つて行く。
どうかして人の家に聖書のあるのを見付けると、その中から一節づつ読んで聞かせる。その度毎に人は皆感動して、驚きの目を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》る。それはセルギウスが読むのを聞けば、今まで好く知つてゐた筈の事も、全く新しい事のやうに聞えるからである。
どこかで人の相談を受けて智慧を貸して遣つたり、又人の力になる事をして遣つたり、喧
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