ずっと家内におぶさりっきりです。家内は若い時分はよく箏をひきましたが、いつの頃からかすっかりやめて、私の眼となることだけに生きるようになりました。そして、私の仕事に対する、なかなかの大批評家になりました。母心の適切な批評をしてくれます。他の人と外へ出かけたときでも、何か遠くから家内が見守ってくれていることを私は感じます。それだけで、私は安心して仕事ができます。手をとってくれる年月が永くなるにつれて、母という感じが家内に加わって、私は頼りきって修業をつづけております。



底本:「心の調べ」河出書房新社
   2006(平成18)年8月30日初版発行
初出:「水の変態」宝文館
   1956(昭和31)年8月1日
入力:貝波明美
校正:小林繁雄
2007年8月13日作成
青空文庫作成ファイル:
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