ひばりは昼間も静かにないている。こおろぎは昼間はゆっくり羽を動かして忍びなきしているように聞こえる。今年の秋は蝉ではオーシーツクが一番あとまで聞こえた。何といってもこおろぎは秋の初めから終りまで鳴き過す。少し寒く感じる日には家の中へはいってきて鳴く。私はその声を聞くと一層かわいらしく思うのである。今はもう秋も末になってこおろぎの声も絶えだえである。風もなく天気のよい午後の空を破るような声を立てて百舌が飛んでいる。



底本:「心の調べ」河出書房新社
   2006(平成18)年8月30日初版発行
初出:「古巣の梅」雄鶏社
   1949(昭和24)年10月5日
入力:貝波明美
校正:noriko saito
2007年12月28日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全6ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮城 道雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング