五十年をかえりみて
宮城道雄
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この度の音楽生活五十年記念演奏会に際し、皆様に御支援を戴いたことを心から感謝いたします。
私は九歳の年の六月一日に箏を習い始めてから、今年が還暦祝などというと、自分でじじくさく感じて心細くもある。しかしこの年を機会に若返っていよいよ勉強したいと思うので、こんどの演奏会を催したのである。
五十年といえば大変長いようであるが、自分ではもう五十年過ぎたのかなと思う位である。私は箏を中心に音楽生活をしているおかげで人生は明るい。しかしその反面には苦難があった。
私の父は、貧乏でありながら気前もよかった。自分が困っていても、人にはそれを見せず、おしげもなくふるまった。したがって、お金はあるだけ使うというたちであった。
父をほめるようでおかしいが、学校は中学を出た位であったが知識は広く、何を尋ねても、何をやらせても人並優れ
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