桜井書店で発行になった吉井勇《よしいいさむ》氏の歌集『旅塵』に、佐渡の外海府での歌の中に「寂しやと海の上《うえ》より見て過ぎぬ断崖《だんがい》に咲く萱草《かんぞう》の花《はな》」というのがあるが、この歌の萱草は疑いもなくハマカンゾウを指しているのである。
終りに、上のナンバンカンゾウそのものについて述べてみると、飯沼慾斎《いいぬまよくさい》の『草木図説《そうもくずせつ》』巻之六(文久元年辛酉1861)※[#「くさかんむり/(糸+爰)」、241−3]に草(通名)と出で、明治八年(1875)の同書新訂版にはワスレグサ萱草と出ているその植物は、けっして※[#「くさかんむり/(糸+爰)」、241−4]草でも萱草でもまたワスレグサでもなくて、これは宜しくナンバンカンゾウとせねば正しい名とはなりえないものである。慾斎氏はこれを Hemerocallis flava(羅)Geele Dagschoon(蘭)にあてているが、これは無論あたっていなく、そしてその正しい学名は Hemerocallis aurantiacus Baker[#「Baker」は斜体] である。本品は蓋し中国の原産で、我国へは
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