よって当時京都大学に在学中の遠藤善之君を煩わし、実地についてそのマアザミを捜索してもらった。同君は親切にも私のためにわざわざ京都から二回も伊吹山方面へ出掛けて探査し、時にそれが伊吹山で見つからないので更に進んで美濃方面に行きついに伊吹山裏の方の山地においてこれを見出し、地元の人にそのマアザミの方言をも確かめ、そしてそこで採集した材料を遠く東京へ携帯して私に恵まれた。私は嬉しくもその渇望していた生本現物を手にしこれを精査するを得、初めてそのマアザミの形態を詳悉することが出来、大いに満足してこのうえもなく悦び、もってひとえに遠藤君の厚意を深謝している次第である。
マアザミとは真《マ》アザミの意であろう。この種は往々家圃に栽えて食料にするとあるから、このマアザミはあるいは菜《ナ》アザミというのが本当ではなかろうかと初めは想像していたが、しかしそれはそうではなくてやはりマアザミがその名であった。このマアザミの葉は広くて軟らかいからその嫩葉は食用によいのであろう。これに反してサワアザミの方は葉が狭く分裂して刺が多くかつその質が硬いから食用には不向きである。ゆえに『草木図説』にもなんら食用のこと
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