フニ風ニ遇テ輙《タチマ》チ抜ケテ旋グル」とも、また「秋蓬ハ根本ニ悪シク枝葉ニ美シ、秋風一タビ起レバ根且ツ抜ク」とも、また「蓬|善《ヨ》ク転旋シ、直達スル者ニ非ザルナリ」とも、また「飛蓬ハ飄風ニ遇テ行ク、蓋シ蓬ニハ利転ノ象アリ、故ニ古ヘハ転蓬ヲ観テ車ヲ為《ツク》ルヲ知ル」とも書いてある。
 もしも蓬に和名がほしければ、あるいはこれをトビグルマ(飛ビ車)、あるいはカゼクルマ(風車)、あるいはクルマグサ(車草)とでもいってみるかな。そうすると飛蓬、転蓬の意味にもかなう訳だ。
 右にて蓬の蓬たるゆえんを知るべきだ。皆の衆聴けよ、この蓬がヨモギだトヨ、我国の学者はトンデモない見当違いをしたもんだ。眼界狭隘しかたもない。しかし大きなことは言わない、お里が分る、実《じつ》の吾らの知識も罌粟粒《けしつぶ》のようなもんだから。

  於多福グルミ

 クルミすなわち胡桃の一種にオタフクグルミと呼ぶ於多福面(スコブル愛嬌のある福相の仮面《めん》)の形をしたものがあって、一つに姫グルミともいわれる。こちらからいえば於多福どん、クルリと回ってあちらからいえば御姫様、と醜美を一実中に兼ね備えているから面白い。

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