ジナモには、確かに花が出るには出るが、一向にそれが咲かないで、単に帽子のような姿をなし、閉じたまま済んでしまう。ところが、日本のものは、立派に花を開く。
そこで、私の写生した図の中の花が、欧洲の学者へは極めて珍らしく感じた訳であろう、後にドイツで発刊された世界的の植物分類書エングラー監修のかの有名な「ダス・プランツェンライヒ」にはその開いた花の図を、上の私の写生図から転載して、私の名と共にこの檜舞台へ登場させてあつた。
私は、これを見て、かつて私の苦難の中でできた図が、かくも世界に権威ある書物に載せらるるのは、面目この上もないことであると、ひそかに喜んだ次第である。
底本:「日本の名随筆94 草」作品社
1990(平成2)年8月25日第1刷発行
2000(平成12)年4月20日第6刷発行
底本の親本:「草木とともに」ダヴィッド社
1956(昭和31)年11月発行
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2007年12月19日作成
青空文庫作成ファイル:
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