を究極の原因とするこうした経済的依存状態から、エンジンの改良なしに脱却するための方法はないか? 実は問題は一八五一年に次のような形で提起されたのである――政府補助金なしに英濠間の汽船航路をいかにして実現せしむべきか?
 この年濠洲のヴィクトリアで金鉱が発見された。もっぱら農業植民地としてのそれまでの濠洲の欧洲にたいする意義が一変した。定期的な連絡が要求された。海底電信はまだだった。金色の植民者団はそれで英濠間の最速汽船にたいする賞金を発表した。
 そこでE・S・N――東方汽船会社というのが英国で設立されて、翌一八五二年に千三百五十トンの汽船を二隻つくって、賞金は見事貰ったが算盤が合わぬことになった。英国政府が郵便補助金をどうしてもくれない。
 株主会議。補助金なしでいかにして経営すべきか? 技師ブランネル氏の最も理論的なプランが株主たちになるべく解りやすい言葉で説明された。エンジンの改良はまだどこでも実現されていない。とすればエンジン以外での技術的改良によって、補助金がなくても儲《もう》かるように工夫するほかはない。それにはべらぼうもなく巨《おお》きな船を造るというのがブランネル氏のプ
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