スとフランスが今日のゼノアと同じ運命に立到《たちいた》りたくなかったら!
 数年ならずしてイングランドからチャグレスへ、チャグレスおよびサンフランシスコからシドニー、広東《カントン》およびシンガポールへ、汽船の定期就航を見るにいたるだろう。
 カリフォルニアの金とヤンキーの不撓《ふとう》の精力のおかげで、太平洋の両岸はたちまちのうちに、今日ボストンからニューオルリーンズにいたる海岸同様の人口を持つこととなり、商業の天地と化するであろう。
 そのときこそ太平洋は、今日大西洋がそして古代中世に地中海が演じた同じ役割を――世界交通の大水路たる役割を演ずることとなるだろう。同時に大西洋は、今日の地中海同様の単なる内海の役割にまで没落してしまうのだ。
 そのときヨーロッパ文明諸国が今日の、イタリー、スペインおよびポルトガルの轍《てつ》を踏んで産業的、商業的および政治的従属状態に陥らないで済むための唯一のチャンスは、社会革命にある。すなわち、間に合うならば、生産および交通方法を近代的生産諸力から生じつつある生産要求そのものに従って変革し、よってもって新生産諸力の発現を可能にするのである。かくすると
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