と》び込《こ》んだ神田《かんだ》の湯屋《ゆや》で、傘屋《かさや》の金蔵《きんぞう》とかいう奴《やつ》が、てめえのことのように、自慢《じまん》らしく、みんなに話《はな》して聞《き》かせてたんだ」
「あいつ、もうそんな余計《よけい》なことを喋《しゃべ》りゃがったかい」
「喋《しゃべ》ったの、喋《しゃべ》らねえの段《だん》じゃねえや。紙屋《かみや》の若旦那《わかだんな》をまるめ込《こ》んで。――」
 下総武蔵《しもふさむさし》の国境《くにざかい》だという、両国橋《りょうごくばし》のまん中《なか》で、ぼんやり橋桁《はしげた》にもたれたまま、薄汚《うすぎたな》い婆《ばあ》さんが一|匹《ぴき》五|文《もん》で売《う》っている、放《はな》し亀《かめ》の首《くび》の動《うご》きを見詰《みつ》めていた千|吉《きち》は、通《とお》りがかりの細川《ほそかわ》の厩中間《うまやちゅうげん》竹《たけ》五|郎《ろう》に、ぽんと背中《せなか》をたたかれて、立《た》て続《つづ》けに聞《き》かされたのが、柳湯《やなぎゆ》で、金蔵《きんぞう》がしゃべったという、橘屋《たちばなや》の一|件《けん》であった。
 が、もう一|度
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