でも譲《ゆず》れる品《しな》じゃねえんだが、相手《あいて》がおせんに首《くび》ッたけの若旦那《わかだんな》だから、まず一|両《りょう》がとこで辛抱《しんぼう》してやろうと思《おも》ってるんだ」
「春重《はるしげ》さん。またお前《まえ》、つまらねえ細工物《さいくもの》でもこしらえたんだな」
「冗談《じょうだん》じゃねえ、こしらえたもンなんぞた、天《てん》から訳《わけ》が違うンだぜ」
「訳《わけ》が違《ちが》うッたって、そんな物《もの》がざらにあろうはずもなかろうじゃねえか」
「ところが、あるんだから面白《おもしれ》えや」
「そいつァいってえ、なんだってんだい」
「爪《つめ》よ」
「え」
「爪《つめ》だってことよ」
「爪《つめ》」
「その通《とお》りだ。おせんの身《み》についてた、嘘偽《うそいつわ》りのねえ生爪《なまづめ》なんだ」
「馬《ば》、馬鹿《ばか》にしちゃァいけねえ。いくらおせんの物《もの》だからッて、爪《つめ》なんざ、何《な》んの役《やく》にもたちゃァしねえや。かつぐのもいい加減《かげん》にしてくんねえ」
「ふん、物《もの》の値打《ねうち》のわからねえ奴《やつ》にゃかなわねえの。
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