やま》を尻目《しりめ》にかけて、めきめきと売出《うりだ》した調子《ちょうし》もよく、やがて二|代目《だいめ》菊之丞《きくのじょう》を継《つ》いでからは上上吉《じょうじょうきち》の評判記《ひょうばんき》は、弥《いや》が上《うえ》にも人気《にんき》を煽《あお》ったのであろう。「王子路考《おうじろこう》」の名《な》は、押《お》しも押《お》されもしない、当代《とうだい》随《ずい》一の若女形《わかおやま》と極《き》まって、出《だ》し物《もの》は何《な》んであろうと菊之丞《きくのじょう》の芝居《しばい》とさえいえば、見《み》ざれば恥《はじ》の如《ごと》き有様《ありさま》となってしまった。
したがって、人気役者《にんきやくしゃ》に付《つ》きまとう様々《さまざま》な噂《うわさ》は、それからそれえと、日毎《ひごと》におせんの耳《みみ》へ伝《つた》えられた。――どこそこのお大名《だいみょう》のお妾《めかけ》が、小袖《こそで》を贈《おく》ったとか。何々屋《なになにや》の後家《ごけ》さんが、帯《おび》を縫《ぬ》ってやったとか。酒問屋《さけとんや》の娘《むすめ》が、舞台《ぶたい》で※[#「插」でつくりの縦棒が
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