ネったものが感ぜられました。
そうして二三年|経《た》ってから。
『若き君の多幸を祈る』と啄木歌集の余白に書いてくれた美少年上原が、女に身を持ち崩《くず》し、下関の旅館で自殺をしたときいた。銀座ボオイの綽名《あだな》があった村川が、お妾《めかけ》上がりのダンサアと心中して一人だけ生残ったとの噂もきいた。
沢村さんは満洲《まんしゅう》へ、松山さんはジャワヘ、森さんは北支《ほくし》、七番の坂本さんはアラスカヘと皆どこかへ行ってしまった。
東海さんは昨年、戦地で逢いました。補欠《サブ》の佐藤は戦死したと聞きました。
戦地で、覚悟《かくご》を決めた月光も明るい晩のこと、ふっと、あなたへ手紙を書きましたが、やはり返事は来ませんでした。
あなたは、いったい、ぼくが好きだったのでしょうか。
底本:「オリンポスの果実」新潮文庫、新潮社
1951(昭和26)年9月30日発行
1991(平成3)年11月30日52刷改版
※本作品中には、身体的・精神的資質、職業、地域、階層、民族などに関する不適切な表現が見られます。しかし、作品の時代背景と価値、加えて、作者の抱えた限界を読者自身が認識することの意義を考慮し、底本のままとしました。(青空文庫)
入力:大野晋
校正:伊藤時也
2000年2月7日公開
2001年1月4日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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