出遊に一二円を費すとも、度数を節して遊ぶべき日にのみ遊ぶ時は、其の暢情《ちょうじょう》快心の量却ツて大きく、費す所は至ツて小なり。至廉とは、彼に当つべき価に非ずして、此に当つべき価なり。
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十分確信したる釣日和[#「釣日和」に傍点]に非ざれば、出遊せず。
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水色なり、風向なり、気温なり、気圧なり、総て想ふ所に適ひ、必勝疑はざる日には、宵立して数里の遠きに遊ぶも好し。それにてさへ、まゝ想はざる悪水悪天候に遭ひ、失敗すること少からず。况《ま》して初めより、如何あらんと疑弐《ぎじ》する日に出でゝ、興趣を感ずべき筈なし、徒《ただ》に時間と金銭を費すに過ぎず。如《し》かず十全の日を待ちて、遺憾無く興趣を釣り、悠々塵外の人となりて、神を養ひ身を休め、延年益寿の真訣《しんけつ》を得んには。
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底本:「集成 日本の釣り文学 第一巻 釣りひと筋」作品社
1995(平成7)年6月30日第1刷発行
底本の親本:「釣遊秘術 釣師気質」博文館
1906(明治39)年12月発行
※ルビを新仮名遣いとする扱いは、底本通りにしました。
入力:門田裕志
校正:土屋隆
2006年10月24日作成
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