型のやうに、何かの賄賂を受け取るまでは、手を延引させておく。そこで其学院の人間の実際の数よりはずつと多い人間のための命令を貰はなければならない事になる。そして其の『余分のもの』は賄賂ともなり、同時に又其の学院の飢えた友達のためのものとなるのだ。
 たとへば、私の友達の学校には六十五人の子供達がゐる。以前の舎監達はみんな架空の人の名前――死んだ魂――を学校の子供達の実際の統計に加へてゐた。かうして手に入れた其の余分の食糧を賄賂に使つて、其のお蔭で舎監達は其の仕事を早く運ぶ事が出来た。学校の主事等はかうしていろんな役所の『勢力のあるもの』に賄賂を使つてゐるので、其の仕事をサボつたり、子供を放つておいたりまた濫用したりしても、或は又往々寄宿生の為めに貰つた食料で投機をしても、ちつともかまはないのだ。彼等は『上の方の友達』を持つてゐるのだ。

     二

 ロシアの到る処に行はれてゐる此の面白いやり方の結果は、勿論明かな事だ。が、私の友達は、そんな事の仲間にはなれなかつた。彼女は『死んだ魂』を加へる事を拒んだ。
 彼女は、其の地方の無数の検査官や、試験官や、懲治官等に賄賂を使ふことを拒絶し
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