如何なる律法も如何なる法廷も一度根ざした恋愛を土から引き放すことは出来ない。けれど、若し土地が不毛なら、結婚はどうして果実を収穫することが出来るか? それは消え行く生命の死に対する最後の絶望的闘争の如きものである。
 恋愛は保護を必要としない。それはそれ自からの保護を有してゐる。恋愛が生命を生んでゐる間、愛情の欠乏の為めに子供が棄てられたり、飢えたり、餓死したりすることはない。私はこれが真であるのを知つてゐる。私は自分の愛した男によつて自由に母になつた婦人を沢山に知つてゐる。どんな子供等でも自由の母が与へることの出来るやうな注意と保護と献心とを享楽することはむづかしからう。
 政府の擁護者は自由母権の到来を恐れてゐる、それはかれ等の餌食を奪はれることを心配するからだ。誰れが戦争をするのか? 誰れが富を造り出すのか? 若し婦人が小児の無差別な養育を拒むなら、誰れが巡査になり、獄吏になるのか? 種族、種族! と帝王や、大統領や資本家や、牧師が叫ぶ。婦人が堕落して単なる機械になつても種族が保存されなければならない――そして結婚制度は婦人の有害な性の目覚めに対する唯一の安全な扉だと云ふのだ。け
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