うように、折竹をみる。
「死ぬだろうよ。日中ゆけば燃えてしまうだろう」
「脅かすな」
 とセルカークは心細そうに笑って、
「頼むよ。俺は君に、全幅の信頼をかけている」
「マアね、君を燃やすことは万が一にもあるまいが……、とにかく、われわれは日中を避けねばならん。夜ゆく。それで、今夜の強行軍でどこまで行けるかということが、覗き穴発見のいちばん大切なところになる。ねえ、地図でみると、台地があるね。ちょうど真中辺で、奇怪な形をした……」
「ふん、“Yazde Kubeda《ヤツデ・クベーダ》”か。その『神々敗れるところ』というペルシア語の意味から、あすこは『驕魔台《ヤツデ・クベーダ》』とかいわれている」
「そうだ。で、これは僕のカンにすぎないがね。得てして、ああいう所には裂け目があるもんだ。まず覗き穴は、彼処《あそこ》らしいといえるだろう。するとだよ、然らば黒焦げになる日中はどうするか。それは、深い穴を掘ってじっと潜っている。マアそれで、体力が続くのは一日ぐらいだろうから、夜になったら強行軍で逃げるのさ」
「驚いた」
 とセルカークはパチパチと瞬いて、
「じゃ、途中で夜が明けたら、焦げてしま
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